話題沸騰!『おっさんずラブ』は腐女子(BL)向けなのか?
(出典:http://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove/)
腐女子歴10年の私が毎週土曜日を楽しみにしていた理由、それはドラマ「おっさんずラブ」でした。
おっさんずラブをまだ見たことない方はもしかしたら

どうせ腐女子を狙ったイケメンが出てくるだけのドラマだろ
と思うかもしれません。
実はこれは私がおっさんずラブを観る前に思っていたことです。
私がこのドラマを観始めたきっかけは母でした。BLのビの字も知らない(けれど娘が腐女子であることは知っている)母が薦めてきたドラマ、それがおっさんずラブでした。
何をここまで人々を(というか私を)夢中にさせたのか、その魅力について考えていきたいと思います。
こんなドラマ初めて!男にモテる主人公。
このドラマの主人公である春田創一(33)は職場の上司の黒川武蔵(55)から好意を寄せられている、全てはそこから始まります。
隠し撮りや過剰なスキンシップをコメディタッチに描き(セクハラが社会問題となっているのにこの表現はいかかがなものかという批判もありましたが)、視聴者を笑わせる。
そんな主人公と部長のセクハラコメディが繰り広げているなか、これまた同じ職場の後輩の牧凌太(25)と主人公はひょんなことからルームシェアを行うことに…。
ほとんどの視聴者はその後、この牧凌太の恋を応援することになります。おっさんずラブは牧凌太を応援するためのドラマだと私は思っています。
ギャグな部長とシリアスな牧。
このバランスがおっさんずラブは絶妙で、BLを普段見ない一般人の人でもこのドラマを観れた一番の要因はここにあると私はにらんでいます。
めくるめく男同士の三角関係、四角関係
春田をめぐって部長と牧は喧嘩をするほど対立するバリバリの三角関係を築きますし、ドラマが進むと主任である武川政宗(44)が牧の元恋人だと発覚します。
この武川の登場により、三角関係が四角関係の様相を帯びてきます。
この四角関係に登場するのが全て男だというドラマがかつてあったでしょうか?
私は最近のドラマを観ていないので詳しくは言えませんが、日ごろ韓国ドラマをはじめ国内外のドラマを色々見ている私の母はこう言いました。

「だいたいドラマでゲイが出てくるなんてせいぜい一組。それも特殊な人として描かれている。でもこのドラマ(おっさんずラブ)はゲイをたくさん出すことによって、同性愛が別に特殊ではないし、なんならそのゲイの中で誰が好きなんだろうって考えて、ちゃんと相手を選んでいるっていうところが今までと全然違うよね」
もうほんと、お母様その通りでございますという感じです。
よく腐女子はイケメンとイケメンがくっついていればいいんでしょ?なんていう心無い言葉を聞くこともありますが、それは違います。
このドラマが全員若いイケメン(それこそジャニーズとか)を用意して、このドラマを演じたらここまで人気になったか?
断言しますが、なっていません。
このドラマで四角関係を構成している年齢層を考えてみてください。
- 牧凌太(25)
- 春田創一(33)
- 武川政宗(44)
- 黒川武蔵(55)
お判りでしょうか?20代~50代まで見事に散らばっています。年齢が違うことによって立場が違います。
中には既婚者もいます。
それでもこのドラマが凄いところは一人一人、なぜこの人を好きになったのかをきちんと描いている、というところです。
部長が春田を好きになった理由、牧が春田を好きになった理由、武川が牧を好きなった理由、それぞれが説得力をもって映像で説明しています。
決して顔で一目ぼれしたわけではありません。
だからこそ、視聴者はそれぞれの恋愛感情に共感し、ともに涙を流し、応援したくなるのです。
BLでは案外スルーされるカミングアウト問題
同性愛を扱うにあたって、避けては通れないのが自分は同性愛者であることを家族なり近しい友人に発表するこのカミングアウト問題です。
正直、腐女子に人気なツールは大抵が二次創作上で腐向けになっているものが多く、元ネタで正式なお付き合いをしているカップルはほとんどいません。
そのため、このカミングアウト問題というのは二次創作で描かれることはあっても原作側がしっかり描くことは今までありませんでした。
これは商業BLと呼ばれるBLコミックでも同様で、私が今まで読んできた作品の多くは相手にどう想いを伝えるのかという葛藤を描く作品はあっても、相手の家族にどう自分たちのことを伝えるのかを葛藤している作品は少ないように思います。
BLはファンタジーという言葉がありますが、確かにリアリティに重きを置いているBLは全体を考えると決して多くはないと思います。
それに引き換え、おっさんずラブはどうでしょうか?
序盤、あんなにギャグを飛ばしていたのに、後半になると一変して(と言いつつもちろんギャグはありますが)街中デートの仕方(人目を気にしている)や家族への挨拶などがえがかれます。
付き合ってからの問題もしっかりと描いている。
これを描くことで、視聴者はこのドラマの登場人物にリアリティをもちます。
テレビの中にいる春田と牧が現実にいるゲイカップルとして応援してしまいたくなるのです。
私は長年腐女子をしていますが、ここまで具体的に将来を考え、応援したくなるカップルはなかなかありません。
振られた側にも感情移入。当て馬など存在しない。
BLでよくあるのが当て馬と呼ばれる、メインカップルをただ嫉妬させるためだけに存在するライバルです。
重きをおいているのはメインカップルなため、基本的に当て馬の情報は薄いです。
下手したらモブと呼ばれる名前のない存在の場合もあります。
もちろん良い当て馬もいますが、それでもメインカップルと比較するとどうしても情報が少ない、それが当て馬という存在なのです。
では、おっさんずラブにおける当て馬とは誰なのか?
まず思い浮かべるのが、最後結婚式まで上げるのに振られてしまう黒川部長です。
けれど、この黒川部長はおっさんずラブのヒロインの異名をもつほどの重要人物で、彼の隠れ公式インスタグラム(?)のフォロワー数はおっさんずラブ公式インスタグラムのフォロワー数より多いのです。
当て馬にこれだけの人気がつくでしょうか?
さらに思いつくのは牧にずっと想いを寄せていた武川主任。
春田に対して嫉妬心を起こさせて、当て馬の役割をしっかり果たしただけでなく、最終回では牧の背中をしっかり押しています。
おっさんずラブで人気なカップルは牧春(春牧)と呼ばれる春田と牧のカップルなのですが、武牧(牧武)と呼ばれる武川主任と牧のカップルも根強く人気なのは、武川主任の人徳があってこそのような気がします。
おっさんずラブにおける当て馬は決して使い捨てではないのです。
様々な愛を教えてくれるおっさんずラブ
結局、おっさんずラブで描かれる愛は多様です。
結ばれる人、結ばれない人、別れた人、片想いの人、本当に様々な愛を描いています。
その様々な愛を丁寧に、けっして適当に描こうとしない、全てのスタッフのこの作品に対する愛。
それがこのおっさんずラブ最大の魅力なのだと思います。
ドラマだけでなく、SNSやプロモーション、美術さんのこだわりなど、本当に役者から裏方まで多くの人の愛によってこの作品は成り立っている。
その愛に腐女子を始め、多くの視聴者が共鳴した。
本当にそれだけのように思います。
おっさんずラブのドラマは終わりましたが、私もいちおっさんずラブのファンとして、今後は公式さんに愛を少しでも返していこうと思っています。
BLとかNLとかそんなものを超越した本当にたくさんの愛をありがとうございました。
結論:おっさんずラブはBLを描いているのではない。描いているのはただのL(LOVE)である。
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